離婚時の「年金分割」とは?基礎知識をわかりやすく解説!
「子どもも自立したので、長い結婚生活にピリオドを打って好きなように生きたい」。
そういった理由から、熟年離婚を決意する方も少なくありません。
熟年離婚においては、老後の生活も遠い将来の話ではないため、特に「年金はどうなるのか」は気になることだと思います。
本記事では、離婚時の年金分割について、基礎知識をわかりやすく解説していきます。
1.年金制度のしくみ
離婚時の年金分割について理解するためには、「年金制度の仕組み」を知っておく必要があります。
日本の年金制度の構造は、「国民年金」を基礎として、「厚生年金」と「企業年金等」が上乗せされる仕組みになっています。
上乗せされていれば、それだけ受け取れる年金が多くなるイメージです。
国民年金(基礎年金)
国民年金は、国内に住む20歳以上60歳未満の方に加入が義務付けられている年金です。国民年金は、加入者が支払う社会保険料と国庫による負担を財源としています。
もっとも公的年金という性質上、国民年金から受給される年金額は、年間約78万円程度と生活に十分な額とは言い難いという現状があります。
厚生年金
厚生年金は、民間企業で働く方や公務員、教職員として働く方が加入している年金です。
厚生年金は、「国民年金部分」に加えて、企業や加入者が収入に応じて「報酬比例部分」を支払うことによって成り立っています。
つまり、厚生年金に加入している場合には、国民年金のみに加入する場合と比べて、将来手厚い保障を受けられることになります。
なお、厚生年金加入者の配偶者は、専業主婦(主夫)や年収130万円未満の被扶養者であれば、自身で年金保険料を支払っていなくても「第3号被保険者」になります。
ただし第3号被保険者として受給できる年金は、原則として、国民年金分(老齢基礎年金)のみになります。
企業年金等
国民年金や厚生年金に加えて、さらに保障を手厚くするための企業年金などの制度もあります。
具体的には、「国民年金基金」「厚生年金基金」「確定拠出年金」「確定給付企業年金」などが該当します。
2.離婚の際の年金分割とは?
では、離婚の際の年金分割とは、どのような制度なのでしょうか。
年金分割とは、離婚する夫婦がそれぞれ受け取る年金額が不公平にならないように調整する制度です。
たとえば専業主婦(主夫)として会社員の配偶者を支えてきた場合には、第3号被保険者として受け取ることができる自分自身の年金は、国民年金部分のみになります。
離婚しなければ、夫婦で同じ家計なので問題は生じないことでしょう。
しかし離婚した場合には、夫婦で年間保険料をやりくりして捻出してきたにもかかわらず、一方は厚生年金として国民年金に上乗せされた報酬比例部分まで受け取ることができるのに対して、他方は国民年金のみだとすれば不公平が生じます。
そのため、婚姻期間中に形成された「厚生年金の報酬比例部分」について、離婚の際に分け合うこととする年金分割制度が設けられています。
3.年金分割の方法
年金分割は、平成20年3月までの年金は「合意分割」の方法で行い、平成20年4月以降の年金は「3号分割」の方法で行うこととされています。
合意分割
合意分割とは、離婚する夫婦で話し合って決めた分割割合で、年金を分割するものです。
合意できない場合には、家庭裁判所の調停や審判などで分割割合を決めます。
3号分割
3号分割とは、年金事務所で手続きをすれば、自動的に2分の1ずつの分割割合で年金を分割することになるものです。3号分割は、相手と話し合って合意する必要がないのでスムーズに進めることができますが、合意分割が必要になるケースであれば合意分割の手続きが必要になります。その際には合意分割の手続きをすれば、自動的に3号分割の請求もなされたことになります。
4.年金分割の注意点は?
最後に、離婚時における年金分割の注意点をみていきましょう。
厚生年金に加入者のみが対象
年金分割というと、夫婦の年金を2分の1ずつに分ける制度と思っている方も少なくありませんが、そうではないので注意が必要です。
あくまでも、厚生年金に加入している配偶者がいる場合に、婚姻期間中に支払った年金保険料に応じた報酬比例部分を夫婦で分け合う制度になります。
そのため、そもそも厚生年金に加入していない場合には年金分割はできず、婚姻期間外の報酬比例部分や企業年金等についての年金分割はできません。
請求期限に注意が必要
年金分割は、基本的に離婚した日の翌日から2年以内に請求しなければならないと決められています。そのため離婚後、年金分割の手続きをせずに放置していれば、請求できなくなる可能性があるので、注意が必要です。
5.まとめ
本記事では、離婚時の年金分割について解説していきました。
夫婦の一方が厚生年金の加入者の被扶養者となっている場合には、厚生年金の報酬比例部分について年金分割で分け合える可能性があります。
請求できる場合には、できるだけ速やかに手続きを行うことが大切です。
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