「自己破産するとできなくなること」とは？よくある誤解も解説

自己破産については、イメージが先行することもあり、誤った情報に過大な心配をつのらせてしまう方も少なくありません。

誤った情報には、「自己破産すると選挙権がなくなってしまう」「海外旅行はできなくなってしまう」などといったものがあります。

このような情報を信じて、自己破産を頑なに回避すれば、事態がより悪化し経済的な再生を図るタイミングも遅れる可能性があります。

本記事では、「自己破産するとできなくなること」について、よくある誤解も含めて解説していきます。

１．自己破産手続き中にできなくなること

自己破産手続き中にできなくなることは、次のとおりです。

もっとも、破産手続開始決定から一定期間（およそ免責許可決定までの期間）について、できなくなるだけで、永久的にできなくなるというわけではありません。

一定の職業に就くこと

破産者は、一定の職業においては、法律による制約を受けます。

そのため、該当の職業に就いている場合には、破産手続中は仕事ができなくなったり、職を失ったりする可能性もあります。

制約を受ける一定の職業には、次のようなものがあります。

・弁護士・公認会計士・税理士・司法書士などの多くの士業

・生命保険募集人や損害保険代理店

・警備員

そのほか、取締役や後見人などにもなることはできません。

対象の職種に就いている場合には、大きなデメリットになる可能性が高い制約になります。

郵便物を直接受け取ること

自己破産は、破産手続きと免責手続きが並行して進められる「管財事件」と、破産手続は開始と同時に廃止され免責手続きのみが進められる「同時廃止」の２つに分けられます。

「管財事件」になった場合には、裁判所の許可によって、破産者宛ての郵便物が破産管財人に転送されることがあります。

その場合、破産者は、自己破産手続中には、郵便物を直接受け取ることはできなくなるという制約を受けます。

自由に転居や長期の旅行をすること

破産手続き中には、破産者は、裁判所の許可なく居住地を離れることはできないとされています。

そのため、自由に転居したり長期の旅行をしたりすることは、できなくなります。

もっとも、転居や旅行が一切できないということではありません。

破産手続中でも、裁判所の許可を得られたときには、転居や長期の旅行・出張も可能です。

２．自己破産手続き後にできなくなること

自己破産手続きによって免責を得た後にできなくなることもあります。

新たに借金をすること

自己破産に限りませんが、債務整理をすれば、信用情報機関に事故情報が登録されます。

「ブラックリストにのる」などと、表現されることもあります。

ブラックリストにのっている間は、新たに借金を申し込んだとしても、銀行や信用金庫などは基本的に事故情報を確認するので、審査に通らなくなります。

なお、自己破産の場合、ブラックリストにのる期間は約10年程度といわれていますが、この期間を過ぎれば、登録された情報が解除されるので、新たに借入をすることも可能になります。

ローンを組むこと

自己破産すると、ローンを組んで商品を購入することができなくなります。

新たにローンを組むことは、新たに借金をすることと変わりがないためです。

車のローンや住宅ローンだけでなく、スマホの端末を分割払いで購入することもできなくなるので、注意が必要です。

７年以内に再度自己破産すること

自己破産で免責を得た場合には、原則として７年を経過していなければ、再度の自己破産はできないとされています。

なぜなら、過去7年間に自己破産で免責の許可を得ていることは、免責不許可事由に該当するためです。

もっとも、７年以内の再度の自己破産であっても、裁判所の裁量によって免責が認められる可能性はあります。

３．自己破産するとできなくなると誤解されやすいこと

最後に、「自己破産するとできなくなる」と誤解されがちですが、実際には自己破産によって影響を受けないものをみていきましょう。

選挙権や被選挙権に影響はない

「自己破産をすると選挙権がなくなる」といった情報は、誤りです。

自己破産によって、選挙権・被選挙権に影響がでることはありません。

生活保護や年金の受給もできる

自己破産によって、生活保護や年金の受給ができなくなることはありません。

生活保護は、要件を満たす限り受給が可能で、自己破産の事実は受給の可否には関係がありません。

また年金に関しては、公的な年金や企業年金は、自己破産によって差し押えられることはないので受給が可能です。

貯蓄や通帳の新規作成もできる

自己破産して免責を得た場合には、借金の返済義務がなくなります。

そのため、新たに余剰資金ができたとしても返済義務はなく、貯蓄することも可能です。

また、銀行などで新規に通帳を作成することも、制約を受けません。

４．まとめ

本記事では、「自己破産するとできなくなること」について、よくある誤解も含めて解説していきました。

いかがでしたか？

自己破産するとできなくなることは確かにありますが、自己破産以外の方法を選択した場合でもできなくなるものもあります。

大切なことは、正しい情報を収集し、できるだけ早く専門家に相談することといえるでしょう。