借金の返済が困難になった場合には、「特定調停」によって債務整理をすることも一つの選択肢になります。

「特定調停」は、裁判所が関与して進める債務整理の方法ですが、どのような特徴があるのでしょうか。

また、「特定調停」には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

本記事では、特定調停について、知っておきたい基礎知識を解説していきます。

１．特定調停とは

特定調停とは

特定調停とは、債権者と債務者が調停委員を介して話し合い、返済計画を立て直すことによって債務者の経済的な再生をはかる裁判所の手続きをいいます。

特定調停は、経済的に破綻するおそれがある債務者（特定債務者）が利用できる手続きですが、個人だけでなく法人等も利用できます。

調停は、借金問題の専門家である調停委員が仲裁してくれるため、債務者本人が直接債権者とやり取りをしなくても済みます。

特定調停の特徴

特定調停は、裁判所での手続きが必要な債務整理の方法ですが、十分な法律知識がない当事者であっても手続きを進めやすいという特徴があります。

ただし、特定調停においては、大幅に債務を圧縮したり、債務を免除したりすることはできません。

特定調停では、たとえば、「申立時における借金の合計額について３年から５年程度の長期分割で支払う」などといった返済計画が立てられます。

そのため、借金の返済が困難な債務者が利用できる手続きであっても、返済のめどが全くたたないような状況では利用が難しいという特徴があります。

２．特定調停のメリット

特定調停の主なメリットは、次のとおりです。

費用が抑えられる

特定調停は、複雑な手続きではないため、債務者自身が手続きを進めることも可能です。

そのため、弁護士などの専門家に依頼するための費用を抑えることもできます。

また、特定調停の申立て時の費用も、個人であれば、債権者１社あたり500円程度の手数料と連絡用の郵便切手代、と安価に抑えることができます。

簡易迅速に進められる

特定調停においては、裁判所が関与する他の手続きと比較して、簡易・迅速に進めることができることもメリットといえます。

特定調停では、当事者は、期日に裁判所に出頭する必要がありますが、通常２回程度と期日は多くありません。

また、手続き終了までの期間も、申立てから２か月程度と迅速に進みます。

強制執行をストップできる

借金の契約が公正証書で行われている場合には、返済が滞れば、債権者は、ただちに債務者の財産に対する強制執行を申し立てることができます。

強制執行の手続きがとられると、給与の差押えなどによって債務者の生活が困窮し、他の債権者への返済も滞る可能性があります。

そのため、特定調停では、全体の返済計画を考えるためにも、強制執行手続きの停止を命じることが認められています。

合意できなくても調停成立の可能性がある

特定調停は、基本的に債務者と債権者が返済計画を見直し、合意を目指す手続きです。

しかし、合理的な返済計画であったとしても、債権者が不当に応じようとせず、調停が成立しないこともあります。

特定調停では、そういった場合に、裁判所の職権によって必要な決定を出すことができます。

そのため、合意できなくても、調停成立によって借金問題を解決できる可能性があり、この点はメリットといえます。

３．特定調停のデメリット

特定調停の主なデメリットは、次のとおりです。

裁判所に出頭する必要がある

特定調停では、それほど多い回数ではありませんが、当事者が期日に裁判所に出頭しなければなりません。

期日は平日の昼間に設けられるので、平日に仕事を休むことが難しい方にとっては、大きな負担になる可能性があります。

任意整理よりも支払額が多くなる

特定調停では、未払いの利息や遅延損害金については支払いが必要になることが少なくありません。

一方、弁護士などに依頼して任意整理をした場合には、未払い利息や遅延損害金についても支払いの免除を受けられる可能性が高くなります。

そのため、特定調停では、任意整理よりも債権者に支払う総額が高くなることが多く、デメリットといえます。

強制執行される可能性が高くなる

特定調停において、調停が成立すれば、調停調書が作成されます。

この調停調書には、公正証書や判決書などと同じように、ただちに強制執行を申し立てられる効力があります。

そのため、調停で決まった内容で支払うことができなければ、ただちに給与の差押えなどの強制執行を受ける可能性が高くなります。

過払い金の返還手続きは別途必要になる

利息制限法を超える金利の取引があった場合には、過払い利息がある可能性があります。

特定調停では、引き直し計算によって借金の減額をすることはできても、返還額が生じている場合に返還手続を取ることまではできません。

そのため、借金の総額よりも過払い利息が多いときには、別途弁護士などの専門家に依頼して、過払い金の返還請求をする必要があります。

４・まとめ

本記事では、特定調停について、知っておきたい基礎知識をご説明していきました。

特定調停は、本人だけで手続きを進めやすい債務整理の方法です。

反面、任意整理よりも支払い額が高くなる可能性があるなどのデメリットもあります。

特定調停を検討する場合には、メリットとデメリットを比較したり、専門家の無料相談を利用したりして、上手に利用するとよいでしょう。

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